鈴木健治

Biography
鈴木健治(スズキ・ケンジ)/ギタリスト。ギターサウンドデザイナー、トラックメイカー。2005年パリコレクションにて生バンドでの演奏。(日本人初。ジェイムス・ブラウン、ボブ・ディラン以来)愛知万博にてグラミー賞シンガー Erykah Baduのサポート。スタジオミュージシャンとして、宇多田ヒカル、MISIA、BoA、EXILE、倖田來未、SMAP、ケツメイシ…etc 多数のアーティストのレコーディングへ参加、その数は1,000曲を超える。キレのあるリズムギター、歌う様なリードギターは、1990年代後半~2000年代のJ-POPでのギターアプローチに多大な影響を与える。ギターマガジンへ自身の奏法解説掲載やレビューなども多数。「鈴木健治のカッティングフィーバー」「鈴木健治のワウワウワールド」ほか掲載。近年はセッションミュージシャンの枠を超えて、ソロギタリストとして音源制作、ライブ活動のほか、iPhoneアプリ、ゲーム、CMなどの音楽制作も行っている。ギターサウンドデザイナーとして、Ovaltone社のディストーションペダルのプロデュースをはじめ、LINE6社のウェブコンテンツ制作、ZOOM社マルチエフェクターのファクトリープリセット作成なども精力的に行なっている。

鈴木健治さんにとってのドライブサウンドとはどのような存在ですか?

エレキギターの表現力を無限に広げてくれるサウンドですね。ドライブサウンドがなければ自分は「エレキギター」という楽器を選ばなかったかもしれません。

表現において、エレキギターに限らず音階を段階的あるいは連続的に変化させる楽器は、音の並び方(=スケール)で音楽を表現することのひとつの正しい手法といえます。また、音の重ね方、強弱、そしてリズムの刻み方にも同じことがいえるでしょう。たとえばクリーントーンでも先ほどお話した、音階、リズム、ハーモニー、強弱(=ダイナミクス)の変化を使った演奏で音楽を表現することはもちろん可能ですし、アコースティックギターやクラシックギターにおいてはそれらを駆使して音楽を表現するのが一般的ですよね。伝統的なジャズギターにもおおむね同じことがいえるでしょう。

エレキギターの場合はそれに加え、アンプやエフェクターの力を借りて音色(=トーン)を変化させることができます。そしてそれらは、トーンを変化させるだけでなく表現手法を大きく広げることもできるんです。ドライブサウンドはそれの最たるものだと思います。

▲数多くのドライブペダルを所有している鈴木氏、その一つ一つに並々ならぬこだわりを感じる。

オーバードライブペダルに求めることはなんですか?

「表現の幅を広げてくれるか」そして「歪んだ上での弾き方にしっかり応えてくれるか」ですね。

素の音をオーバードライブさせることで表現の幅が一気に広がる、とお話しましたが。まずはそれができないと音を汚し歪ませるだけの「ただのノイズ」になってしまいます。広い意味でノイズがまったくない音楽に個人的にあまり魅力を感じませんが、それとは別のただの雑音。これはダメです。

歪んでいても音楽的に表現され、歪んでいるからこそできる奏法にしっかりとついてきてくれる。そういったドライブペダルにはとても魅力を感じますし、弾いていて気持ちがよいです。

C3H5N3O9/ニトログリセリンが応えてくれる点はどういったところですか?

先ほどお話したこと、表現の幅を広げてくれて、歪んだ上での弾き方にしっかりついてきてくれるところですね。弾き方によるトーンの変化もとても音楽的だと思いました。弾いていてとても気持ちがよいです。これは特筆すべきことなのですが、ニトログリセリンで出すトーンから僕自身がインスピレーションを与えられて、それが演奏に反映されることもあるんです。こういうドライブペダルにはめったに出会うことができないんですよ。

アンプとエフェクターの関係についてどうお考えですか?

これは深いというか、一言では言い表せませんね…

アナログ、真空管、デジタル、モデリング…etc どんな仕組みでできているかは問わず、エレキギターである以上ギターアンプはなくてはならないものです。そういう意味ではエレキギターの生音とはアンプに繋いで出た音だと僕は考えています。なににも繋がずじゃらんと弾いた音が生音とは考えていないんです。もちろん出音に影響はありますが、エレキギターの基本の音としては「アンプに繋いだ音が生音」だと思っています。

また、アンプとギターだけでもトーンを変えたり、もちろん歪ませたりと、さまざまなことができます。じゃあ「ドライブペダルなんか必要ないじゃん…」となるかといえば、けっしてそうではなく「アンプには付いていない外付けの拡張パーツ」と考えるのがよいと僕は思っています。

車でもパソコンでもなんでもそうですがサードパーティーのメーカーが作る外付けのパーツを加えることで、新たに可能になることが多々あるかと思いますし、それは個性ということにも繋がるんじゃないかな、なんて思ったりもします。土台となるアンプがしっかりしていれば、外付けのパーツであるエフェクターを加えることで、さらに表現の幅が広がりますし、自分らしさの追求にも繋がるのではないでしょうか。またニトログリセリンのルックス、これもかなり個性的でかっこいいと思いますので、足元にあると思わず「お!」となるのでは。

▲鈴木氏所有のアンプ、こだわりのサウンドはここから生まれてくる。

C3H5N3O9/ニトログリセリンのおすすめセッティングを教えてください。

【A】ドライブ0-1、そのほかはすべて5。
クリーンなアンプに繋ぐと、中低域が少し飽和してクリーンな雰囲気ながらあたたかくなる印象です。ニュアンスがしっかりと保たれているのでソロの時にオンにするのもよいかもしれません。また、Roland社のJC-120などに繋いで、ベーシックなクリーンサウンドとして使うのもありかと思います。

 

【B】レベル5、ドライブ10、ベース3、トレブル0
少々極端なセッティングですが、ポールリベラが改造して歪むようになったFender社のDELUXE REVERBのような、良質なオーバードライブなリードサウンドが出せます。70年代クロスオーバーやスティーリー・ダンの作品で聞けるようなアナログなドライブサウンドともいえますね。以前、リベラのジェイグレイドンモデルを弾いたことがあるのですが、それに近い印象も受けました。変にローが出すぎないところも扱いやすいと思います。ドライブサウンドでの低域は魅力でもありながら邪魔なこともありますしね。

 

【C】レベル7、ドライブ2、ベース0、トレブル8
別のドライブペダルをブーストさせるのによいと思います。元のドライブペダルの質感が大きく変わらずにゲインアップができるのが素晴らしいですね。

▲左から鈴木氏おすすめ【A】~【C】のセッティング例。

プロの現場がドライブペダルのEQに求めることはなんですか?

ドライブペダルのトレブル、ベースなどのコントロールは、たしかに低域と高域に変化を与えるものなのですが、たとえばポストでのパラメトリックイコライザーのような鋭い可変はかえって扱いにくくなると考え、そのペダルのデフォルトなトーンをアンプやギターに合わせてサクッと調整できるのがよいと思います。現場でサクッと変えたい時に、効きすぎるイコライザーは逆に迷ってしまいますし。そこまでイコライジングするならペダルごと替えたほうがよい場合が多いです。

ニトログリセリンのトレブルとベースはサクッと使える変化をしてくれるので、そこがバッチリだと思いました。極端なセッティングにしても破綻しない可変範囲が絶妙ですね。また、ニトログリセリンのトレブル、ベースはドライブの質感にも影響するようですので、ベースをグッと上げてファズっぽくブーミーにすることもできます。それでも破綻せず使える音に収まるので、そういう意味でも扱いやすいと思います。

どのような音楽ジャンルでC3H5N3O9/ニトログリセリンを使用したいと思いますか?

ジャンルでいうと、今はミクスチャーが基本だったりするので、なかなかこのジャンルと決めるのは難しいですが…

あくまで僕の私感になりますが「スタックタイプの音圧命!」みたいな歪みでなく、もっとオーガニックであたたかい歪みが欲しい方にオススメできますね。クリーントーンに浅くかければ、あたたかみのあるリードながらも、方向性としてしっかりとクリーンな印象の音が出せますし。フルで歪ませても決して細くならず、あたたかく自然なドライブサウンドになります。表現力を大事にする方によいかと思います。

また、コンプ感は薄めなのでニュアンスも出しやすいですし、場合によっては手前にコンプをかましてロングサスティーンを得るのもよいかもしれませんね。全体的にまとまりのある音でありながら、弾き手の個性を引き出せる。そんなドライブペダルだと思いました。

インタビューにお答えいただきありがとうございました!
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